シイタケの島

ある日、なんにもない島で。
〜 Chapter6 〜
星がまたたき、なんにもない島にいっそうの静寂が訪れる時間。
ひっそりと目を閉じ、かすかに微笑みを浮かべたまま、男は永遠の眠りにつきました。

「?」

いつもと違う様子に、シイタケの中の「むずむず」が、すこし動き始めます。

男の肩に乗りぴょんぴょん飛び跳ねてみました。
男は目を閉じたままです。

髪の毛をつんつん引っ張ってみます。
いつもなら払いのけようとする手は、今日はやってきません。

男のわきの下や首筋のあたりで体をゆすってみるものも。
いつもならくすぐったがって笑いだすのに、男はぴくりともしません。

そして朝が来るころ…。
シイタケは知ったのです。男がもう、ここにはいないということを。
その瞬間、また「むずむず」がやってきました。

あらたにわき上がった「むずむず」は、これまでとは違った「むずむず」でした。
わき上がるやいなや、シイタケの中で重さとカタチと温度をもちました。

「カナシイ」
「サミシイ」
「クルシイ」

そしてさらに、
いままでに感じたさまざまな「むずむず」も、あふれるようによみがえってきました。

かつて男がシイタケに見せた、表情、しぐさ、コトバ・・・、
そのすべての意味が、今のシイタケにはわかります。

うれしい、たのしい、おいしい、うつくしい、おそろしい、なつかしい・・・・・

「むずむず」たちは、次々とふくらみ、はじけ、飛び散り、
シイタケの内側でうねり狂う大きな渦となって、あふれかえっていきました。

そしてそのとき、シイタケは悟ったのです。

「こんな厄介なものを、じぶんひとりでかかえることなんかできやしない」

次の瞬間、彼らは目を閉じると、パチンとはじけて消えました。
幾百、幾千、幾万という感情の胞子たちをまき散らして…。


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