シイタケの島

ある日、なんにもない島で。
〜 プロローグ 〜
それは、広い広い海のどこかにある島のおはなし。
名前もない、地図にもない、渡り鳥さえ知らないちいさな島のできごとでした。

島には、誰も見たことのない不思議ないきものたちが住んでいました。
白っぽくふにゃふにゃした体に笠をかぶったような頭、いつもキョトンとしたような黒い目。
ぷよんぷよんと揺れながら歩くその姿は、
植物のようでもあるし、おばけか妖精のようにも見える。
いいえ、ちょっと見には、まるでシイタケそのものでした。

そのシイタケたちにとって、島はたったひとつの世界でした。
澄んだ空気があり、豊かな緑の森があり、青い空と真っ白い雲がある。
風は凪ぎ、波はおだやかで、小川を流れる水は冷たく甘い。

なにもかも満ち足りたこの島は、だけどなんにもない島でした。
笑顔も、涙も、悲しみも、あらそいごとも、びっくりも、どきどきも。
シイタケたちには、まったく無縁のものでした。
なぜなら、なにもかもがあらかじめ満ち足りた
この世界には、ココロをうごかすできごとも、
ココロをうごかす必要もないんですから。

理由もなく生まれてきて、そして時が満ちれば消えてなくなる。
そんな暮らしを生きる彼らのこころはとても静かで、純粋で、
そしてからっぽなのでした。


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